
外壁リフォームを考えはじめると、多くの方が「塗装」か「張り替え」かの2択で頭を悩ませます。手軽さと費用で選ぶなら塗装、耐久性の高さなら張り替え。どちらも魅力的なリフォーム方法ですが、一長一短あることも事実です。しかし、もしそのいいとこ取りができる第3の選択肢があったらどうでしょう。
この記事では「カバー工法」も交え、3つのリフォーム方法を徹底比較。それぞれの特徴や費用、どんなお住まいに向いているのかをわかりやすく解説します。
外壁リフォームの重要性と劣化のサイン
まずは外壁リフォームの重要性を知り、自宅の外壁がどのような状態なのか、ご自身でチェックすることからはじめましょう。
外壁リフォームの目的とは
外壁のリフォームの目的は、見た目をきれいに保つためだけではありません。外壁は、日々紫外線や雨風にさらされ続けると、新築時に施された塗装(塗膜)が劣化し、防水機能を失っていきます。
この劣化を放置してしまうと、外壁材そのものがダメージを受けてしまいます。最悪の場合、雨漏りが発生して建物の構造躯体にまで影響が及び、高額な修繕費用が必要になることも。だからこそ、外壁が発している「劣化のサイン」を見逃さず、適切な時期にメンテナンスを行うことが、大切な住まいを長持ちさせるポイントになるのです。
劣化サインが見られたらリフォームのタイミング
自宅の外壁に以下のような症状が出ていないか、確認してみましょう。
1.色あせ・変色

新築時と比べて、外壁の色が薄くなったり、くすんで見えたりする状態です。紫外線によって塗料の顔料が劣化しているサインで、塗膜の保護機能が低下しはじめている証拠です。
2.チョーキング

外壁を手で触ったときに、チョークのような白い粉がつく現象です。これは、塗料の成分が紫外線や雨によって分解され、粉状になって現れたもの。塗膜の劣化がかなり進行し、防水機能が大きく低下しているサインです。
3.ひび割れ(クラック)

外壁の表面に髪の毛のような細い線から、目視でわかる太さの亀裂まで、さまざまなひび割れが発生している状態です。小さなひび割れでも、そこから雨水が侵入し、冬場に凍結・膨張することでひび割れを拡大させる恐れがあります。
4.塗膜の剥がれ・膨れ

塗装が水ぶくれのように膨れていたり、パリパリと剥がれ落ちていたりする状態です。塗膜と外壁材の間に湿気が入り込むことで、密着性が失われてこの現象が起こります。外壁材が雨水や紫外線によるダメージを直接受けてしまうため、早めの点検・補修が必要です。
5.コケ・カビの発生

日当たりの悪い北側の壁や、湿気の多い場所に緑色のコケや黒いカビが発生する現象です。塗膜の防水性が切れ、外壁が常に水分を含んでいる状態を示しています。
6.シーリング(コーキング)の劣化

サイディングボードの継ぎ目にあるゴム状のシーリング材に、ひび割れや痩せが見られる状態です。この隙間は雨水の主要な侵入口となり、放置すると壁の内部や構造躯体を腐食させる原因になります。
これらのサインは、外壁のメンテナンスを検討すべき時期が来ていることを示しています。早めに対処すれば、結果的にリフォーム費用を抑え、住まいの寿命を延ばすことにつながります。
基本の2択「外壁塗装」と「張り替え」を比較
外壁リフォームにはいくつかの方法がありますが、代表的なのが「塗装」と「張り替え」です。それぞれどんな特徴があるのか、比べてみましょう。
手軽さと費用が魅力の「外壁塗装」

既存の外壁の上から新しい塗料を塗り重ねる、メンテナンス方法です。
一番のメリットは、やはり費用を抑えられる点。張り替えに比べて工期も短く済むため、「そろそろ外壁が気になるな」と思ったときに、比較的気軽に実施できるのが魅力です。また、好きな色を選んで、住まいの印象をガラッと変えられる点もメリットです。
しかし、外壁塗装はあくまで「表面の化粧直し」に近いメンテナンス方法です。外壁材そのものに生じた反りや深刻なひび割れ、内部に生じた下地の腐食などの問題は、塗装だけでは解決できません。住まいの寿命を延ばすというよりは、見た目をきれいにし、防水機能を回復させるのが主な目的になります。
築年数がまだ浅く、外壁に大きなダメージが見られない場合の定期メンテナンスに適した方法です。
見た目も性能も新築同様にできる「外壁張り替え」

張り替えは、既存の外壁材を一度すべて取り払い、下地から新しくする本格的なリフォームです。
張り替えを選ぶメリットは、やはり外壁に関する問題を根本から解決できる点にあります。普段は見られない壁の内部、下地や防水シートの状態まで直接確認し、必要であれば補修もできるため、住まいの寿命を延ばすことにつながるのです。外観が美しく一新されるだけでなく、壁の性能も新築時に近い状態まで回復させることができます。
ただし、工事が大掛かりになる分、費用はどうしても高くなります。古い外壁の撤去や処分にも費用がかかるため、塗装の2倍以上の金額になることも。工期も1ヶ月以上かかるのが一般的です。
特に気をつけたいのが、劣化を長く放置してしまったケース。雨漏りが建物の構造部分にまで達していると、その補修のために思わぬ追加費用が発生することがあります。さらに、2025年4月からの建築基準法の改正(4号特例の縮小)によって、大規模な修繕には「建築確認申請」が必要になる可能性も出てきました。そうなると、余計な手間と時間に加え、費用もかさんでしまいます。
「悪くなったら張り替えればいい」と考えるのは、実はかなりのリスクを伴います。張り替えが必要になるほど深刻な事態になる前に、早めにリフォームを決断しましょう。
外壁塗装と張り替えについて、以下に簡単にまとめました。

第3の選択肢「カバー工法」とは?

外壁塗装と張り替え、どちらにしようか決めかねている方に知ってほしいのが、「カバー工法」です。
これは、今ある外壁の上から新しい外壁材を重ね張りする、リフォーム方法。塗装と張り替え、それぞれのメリットのいいとこどりとデメリットを解消する方法として注目を集めています。
カバー工法が選ばれている理由
カバー工法がなぜ多くの方に選ばれているのか、その理由を具体的に見ていきましょう。
・コストパフォーマンスの高さ
張り替えで費用がかさむ大きな理由の一つが、古い外壁の解体費用と、その廃材の処分費用です。カバー工法ではこの工程がまるごと不要になるため、費用を大きく抑えられます。それでいて、見た目は新築同様の外壁に生まれ変わるため、コストパフォーマンスは高いといえます。
・住まいの快適性がアップ
外壁が二重になり、住まいの断熱性や遮音性が向上するなど、塗装にはない付加価値が得られるのもカバー工法の大きな魅力です。夏は涼しく冬は暖かい快適な空間が生まれ、光熱費の節約にもつながります。
・短い工期とストレスの少なさ
工期が短く、普段の生活への影響が少ないのもポイントです。解体作業がないため、工事中の騒音やホコリも比較的少なく、廃材もほとんど出ません。ご近所への配慮という点でも、気兼ねなくリフォームを進められます。
・将来の余計な手間と費用を回避
意外と見落とせないのが法的な手続きの手間です。先ほど触れたように、大規模な修繕となる張り替えは、「建築確認申請」が必要になる可能性があります。カバー工法はこうした手続きが必要ないため、余計な手間や費用の心配なくリフォームを進められます。
デメリットも知っておこう
多くのメリットがあるカバー工法ですが、いくつか注意点もあります。
・既存の外壁の状態によっては施工できない場合がある
カバー工法を行うには、あくまで現在の外壁がしっかりしていることが前提です。外壁の劣化が激しく、剥がれや内部の下地の腐食が深刻な場合は、上から新しい外壁材を張れません。その場合は、根本的な解決策である「張り替え」をおすすめします。
・既存の外壁材の種類によっては施工できない
既存の外壁がタイル、金属サイディング、トタン、ALCパネルなどの場合は、基本的にカバー工法による施工はできません。これらの素材は、上から新しい外壁を固定するための下地として適していないためです。
カバー工法について、以下に簡単にまとめました。

▼【関連記事】外壁カバー工法についてはこちら▼
【30年後の費用も比較】外壁カバー工法のメリット・デメリット徹底解説!失敗・後悔しないための対策
カバー工法で人気の軽量外壁材
カバー工法では既存の壁の上に新たな外壁材を重ねるため、窯業系サイディングなど重い外壁材は基本的に不向きとされています。そのため、軽量な金属サイディングや樹脂系サイディングが適しています。
・金属サイディング(ガルバリウム鋼板など)
ガルバリウム鋼板を中心とした金属サイディングは、カバー工法定番の外壁材。非常に軽いため建物への負担が少なく、カバー工法にうってつけの素材といえます。断熱材が一体になった製品が多く、断熱性や遮音性をさらに高めてくれるのもうれしいポイントです。さびにくく耐久性も高いため、メンテナンスの手間を減らしたい方にもおすすめ。デザインも、モダンでシャープな印象のものから、温かみのある木目調や重厚感のある石積調まで、豊富に揃っています。
・樹脂系サイディング
欧米ではポピュラーな外壁材である、樹脂系サイディング。金属サイディングよりもさらに軽く、塩害や凍害といった厳しい環境にも強いのが特徴です。また、素材自体に色が練り込まれているため、塗装が剥げる心配がなく、色あせしにくいのもメリット。ボードのつなぎ目にシーリング(コーキング)を使わない工法なので、将来的なシーリング打ち直しなどのメンテナンス費用もかかりません。
ただし、樹脂サイディングは、日本ではまだあまり流通していないのが現状です。そのため、国内のカバー工法では、一般的に金属サイディングが用いられています。
▼【関連記事】ガルバリウム鋼板についてはこちら▼
外壁カバー工法はガルバリウム鋼板を選ぶべき?メリットやリフォーム費用まで徹底解説
どんな仕上がりになる?カバー工法の事例
実際にカバー工法で外壁をリフォームした場合、どのような仕上がりになるのか気になる方も多いはず。そこで、サーラハウスサポートが施工した事例をご紹介します。
事例①
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外壁の劣化や屋根の破損が気になるとのことで、外装リフォームをご依頼いただきました。張り替えが必要なほどの劣化ではなかったため、外壁、屋根ともにカバー工法をご提案。リフォーム前はクリーム色の南欧風の外観でしたが、モスグリーンの外壁材を選ばれ、リフォーム後は落ち着いた印象になりました。「見た目はもちろん、以前よりも冬の寒さを感じにくくなりました」とうれしいお言葉をいただきました。
▼詳しい施工内容はこちら▼
https://sala-shs.co.jp/case-old/roof/w01
事例➁
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新築から約30年が経過し、外壁の劣化が目立ちはじめたお住まい。当初は塗装によるリフォームをご希望でしたが、劣化の進行状況から塗装では十分な改善が難しいことから、外壁カバー工法をご提案しました。明るいブラウンの外壁に生まれ変わり、住まい全体がまるで新築のような印象に。見た目の美しさはもちろん、機能面も大きく向上しました。
▼詳しい施工内容はこちら▼
https://sala-shs.co.jp/case-old/roof/y01/
事例③
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「これからも安心して暮らせるように、屋根と外壁をまとめてきれいにしたい」とご相談をいただきました。2階部分はタイル外壁の保護を目的に塗装を行い、1階部分には金属サイディングを用いたカバー工法を採用。耐久性・断熱性ともにアップし、安心して快適に過ごせる住まいへと生まれ変わりました。
▼詳しい施工内容はこちら▼
https://sala-shs.co.jp/case/case-1422/
あなたの家に最適なリフォームは?簡単セルフチェックリスト

ここまで3つのリフォーム方法をご紹介してきましたが、「結局、わが家にはどれが合っているの?」と思った方も多いのではないでしょうか。
そこで、ご自身の状況に当てはまる項目をチェックするだけで、最適なリフォーム方法がわかる簡単なリストをご用意しました。
【STEP1】まずは基本的な状態をチェック
□ 新築あるいは前回の塗装から10年前後経過している
□ 外壁の大きなひび割れや剥がれはなく、主に色あせや汚れが気になっている
□ とにかく費用を抑えて、まずはきれいにしたい
→ 2つ以上当てはまるなら…「塗装」がおすすめです。
まだ外壁の傷みが少ない状態なら、コストを抑えられる塗装がおすすめ。定期的な塗り替えで、住まいの美観と防水性を保ちましょう。
【STEP2】外壁材の劣化度をチェック
□ 築15年以上が経過している
□ 外壁のひび割れが複数ある、またはサイディングが反っている
□ シーリング(コーキング)がひび割れて、隙間が空いている
→ 1つでも当てはまるなら…「カバー工法」も視野に入れましょう。
塗装だけでは解決できない、外壁材自体の劣化がはじまっている可能性があります。塗装よりも長持ちし、見た目も一新できるカバー工法を検討するとよいでしょう。
【STEP3】暮らしの満足度をチェック
□ 外壁のデザインをガラッと変えて、新築のようにしたい
□ 夏の暑さや冬の寒さを軽減して、光熱費を節約したい
□ 道路や線路が近く、外の騒音が気になる
□メンテナンスに関わる費用や作業を抑えたい
→ 1つでも当てはまるなら…「カバー工法」がおすすめです。
カバー工法は、見た目を新しくするだけでなく、断熱性や遮音性を高める付加価値があります。リフォームを機に、より快適な暮らしを手に入れたい方にはぴったりです。
【STEP4】特に注意したい劣化のサインの有無をチェック
□ 外壁が波打っている、または部分的に膨らんでいる
□ 外壁の一部が剥がれ落ち、下地が見えている
□ 室内で雨漏りが発生している
→ 1つでも当てはまるなら…「張り替え」も視野に入ります。
これらの症状は、外壁の内側まで劣化が進行している可能性を示すサインです。カバー工法では対応できない場合もあるため、根本的な解決策である「張り替え」も視野に入れ、早急に専門家による詳しい診断を受けることをおすすめします。
外壁リフォームの費用を抑える補助金

外壁リフォームは決して安い買い物ではありませんが、国や自治体の補助金・助成金制度をうまく活用すれば、費用負担を軽減できる可能性があります。
国の補助金は「省エネ性能の向上」がカギ
「子育てグリーン住宅支援事業」などの国が主体となる補助金制度は、住宅の省エネ性能向上を促すのが大きな目的です。 そのため外壁リフォームで対象となるのは、外壁の張り替えと同時に壁内部へ断熱材を施工するなど、住宅全体の性能を高める本格的な「断熱改修」が中心です。
一方で、断熱材一体型のサイディングを用いたカバー工法や断熱塗装は、国の性能基準を満たせず、補助金の対象外となっているのが現状です。
自治体の補助金は「断熱」以外の目的でも活用できる
国の補助金が「断熱」を重視するのに対し、各自治体が独自に行う補助金は、より幅広い目的で活用できる可能性があります。外壁リフォームだけを単独で支援する制度は多くありませんが、工事の目的を補助金の趣旨に合わせれば、費用負担を軽減できる場合があります。
例えば「三世代同居支援」や「移住・定住促進」などを目的とした補助金は、工事内容を限定しない「住宅リフォーム全般」を対象としていることが多く、活用しやすいでしょう。「親との同居を機に、内装リフォームと併せて外壁もきれいにしたい」といったケースなら、塗装・カバー工法・張り替えを問わず対象となる可能性があります。
「自分の地域で使える制度はあるの?」と気になったら、お住まいの地域に根差したリフォーム会社に相談するとよいでしょう。
注意点
補助金は魅力的ですが、それを使うために本来不要な大規模工事(張り替え)を選んでしまうと、かえって高くつくことも。補助金の有無だけでなく、工事全体の費用やメリットまで考慮して総合的に判断するようにしましょう。
火災保険が使える可能性があるケース

台風や雪、雹(ひょう)などの自然災害が原因で外壁が破損した場合は、火災保険を使って修理できる可能性があります。
ただし、保険の対象となるのは、あくまで台風による飛来物での破損や、大雪の重みによる変形といった自然災害が原因の被害に限られます。経年劣化によるひび割れや色あせは対象外です。
また、保険が適用されるかどうかは、保険会社による現地調査や書類審査を経て最終的に判断されます。そのため、必ず保険が使えるとは言い切れませんが、申請してみる価値はあるでしょう。
外壁塗装と張り替えのいいとこどりをしたカバー工法でリフォームしよう

外壁リフォームの方法は一つではありません。「塗装」「張り替え」そして「カバー工法」、それぞれに良さがあります。その“いいとこどり”ともいえる「カバー工法」は、費用を抑えつつ外観も性能もグレードアップさせたいというご要望に応えられる、バランスの取れたリフォーム方法といえるでしょう。
ただし、最適な工法は、ご自宅の外壁の劣化状況によって大きく異なります。「うちの場合はどの方法がベストなの?」と迷われたら、ぜひサーラハウスサポートにご相談ください。経験豊富なプロがご自宅の状態を正確に診断し、お客様のご希望に沿った最適なリフォームプランをご提案いたします。


 