築20年となると、前回の塗装から10年が経ち、そろそろ屋根のメンテナンスが必要な時期を迎えます。雨風や紫外線にさらされる屋根は、想像以上に劣化が進んでいるかもしれません。放置すれば雨漏りや住宅寿命の低下につながります。
そこで注目したいのが「カバー工法」。塗装より長持ちし、葺き替えより安価なこの工法、気になっているけど、「どれくらい費用がかかるのか心配」「実際にカバー工法を選んで後悔することはないの?」という声も聞かれます。
そんな不安を解消するため、この記事ではカバー工法のメリット・デメリット、費用相場、よくある質問など詳しく解説します。
【カバー工法・葺き替え・塗装】後悔しないために知っておきたいメリット・デメリット比較
屋根のリフォームには、カバー工法の他に、葺き替え、塗装といった方法があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、費用の大小だけでなく、ご自宅の屋根の状態や今後のライフプランも踏まえ、最適な方法を選択しましょう。
ここでは、葺き替えと塗装の特徴を詳しく解説します。
葺き替えとは?
葺き替えは、既存の屋根材を撤去し、新しい屋根材に交換する工法です。屋根の劣化が著しい場合や、屋根材の種類を変更したい場合に適しています。
屋根材と下地を全て新しくするため、新築時と同様の耐久性が期待できます。屋根材の種類も自由に選択でき、和風から洋風まで、住宅のデザインに合わせて変更が可能です。
一方で、カバー工法や塗装に比べて費用が高額になるのがデメリットです。さらに、屋根材にアスベストを含む場合は適切な処置が必要となるため、より多くの費用が必要になります。
塗装とは?
屋根塗装は、既存の屋根材の上に塗料を塗布することで、屋根材の劣化を防ぎ、建物の美観を向上させます。価格が手ごろで工期が抑えられることから、多くの方が選択する工法です。豊富なカラーバリエーションが用意されており、外観にこだわりのある方にもおすすめできます。
ただし、塗装は屋根材の表面を保護する効果はありますが、屋根自体の劣化を根本的に解決するものではありません。そのため、安易な塗装には要注意です。
すでにひび割れや腐食などの劣化が進行している屋根に塗装を施しても、その後の補修のリスクは高いままになり、結局別の工法での補修が必要となるケースも少なくありません。長期的な視点やコストパフォーマンス、基材の劣化状況などを総合的に考えると、塗装が最適な手段ではない場合もあることを覚えておきましょう。
カバー工法とは?
屋根カバー工法とは、既存の屋根材を撤去せず、その上から新しい屋根材を被せるリフォーム方法です。葺き替えよりも費用が抑えられ、塗装よりも長持ちするのが特徴です。
次章から、カバー工法のメリットとデメリットを詳しく解説します。
屋根カバー工法のメリット
カバー工法は費用や工期を抑えながら屋根の寿命を延ばしたい方にとって、魅力的な選択肢になり得ます。ここでは、屋根カバー工法のメリットについて詳しく解説していきます。
耐用年数が長い
屋根カバー工法は耐用年数が20~30年程度と長く、頻繁にリフォームを行う必要がないことが大きなメリットです。塗装の場合、耐用年数が10~15年のものが多く、そのたびに業者選びや見積もり依頼をする必要がありますが、耐用年数が長いカバー工法であればそのわずらわしさから解放されます。
工期が短い
葺き替え工事は1週間~1ヵ月程度かかるところ、カバー工法は5日~2週間程度と半分程度の工期で済みます。
工期が短いと騒音や振動、そして作業員の方々が自宅周辺を行き来することのストレスにさらされる期間が短くなります。ご近所への迷惑も最小限で済むため、ご家族とご近所の方々にとってもメリットとなるでしょう。
費用を抑えられる
耐用年数10年の塗料を用いて塗装した場合と、耐用年数30年のカバー工法を比較してみました。
塗装:塗装代50万円+下地補修30万円=80万円/回
カバー工法:材料費・施工費等=150万円
一見すると塗装のほうがリーズナブルに見えますが、15年ほどで再塗装の時期を迎え、同額またはさらに費用がかかるかもしれません。一方、カバー工法は、初期費用こそ高めですが、耐用年数を迎えるまで、追加工事の必要はありません。
また、葺き替え工事では既存の屋根材を撤去・処分する必要がありますが、カバー工法ではその手間や費用がかからないため、コストを抑えやすいのです。
アスベスト対策が可能
屋根のカバー工法は、既存の屋根材を撤去せずに新しい屋根材を被せるため、アスベスト(石綿)が飛散するリスクを最小限に抑えられます。
アスベストは1990年代以前に建てられた住宅の屋根材に含まれている可能性があり、吸い込むと健康被害を引き起こす危険性があります。アスベストが含まれている屋根材を葺き替える場合、工事期間も長くなりやすく、除去・処分費用が別途発生します。
もしアスベストを含む可能性があるなら、カバー工法は有力な選択肢になります。
断熱性・遮音性の向上
カバー工法により既存の屋根と新しい屋根の間に空気層ができるため、断熱性・遮音性を向上させる効果も期待できます。
屋根の断熱性が向上すると、快適な室内環境づくりや光熱費削減につながります。また、雨音など外部からの騒音を軽減する効果があるのも、うれしいポイントです。
屋根カバー工法のデメリットと失敗例【後悔しない対策法も】
屋根カバー工法には多くのメリットがある一方で、デメリットや失敗例も存在します。事前にデメリットを理解しておくことで、後悔のない選択ができるでしょう。
屋根の重量増加
カバー工法は屋根の重量が増加するため、建物の強度が低い家の場合、地震や台風の際に揺れが増幅され、建物全体へのダメージが大きくなる可能性があります。特に築年数が経過している家は、構造部材の劣化も進んでいるため、重量増加の影響を受けやすいといえます。
対策としては耐震診断を受けた上で、カバー工法が適切かどうか判断してもらうようにしましょう。また、屋根材の種類を選ぶ際も、軽量なものを選ぶことで重量増加を最小限に抑えられます。
既存屋根の状態に左右される
例えば、屋根材の下地が腐食していると新しい屋根材を支えられず、カバー工法の施工は難しくなります。
まずはドローンなどで撮影、もしくは小屋裏から屋根の劣化状態を確認してもらいましょう。下地の腐食や屋根材の損傷が軽微であれば、補修することでカバー工法が可能になる場合もあります。
通気性の問題
カバー工法による屋根リフォームで、屋根と既存屋根材の間の通気性が悪くなる可能性があります。湿気がこもると結露やカビが発生し、木材の腐食につながることもあります。
このような問題を防ぐためには、既存屋根材と新しい屋根材の間に通気層を設けたり、断熱材と一体化した屋根材を使用したりするといった方法があります。
将来的に葺き替えが必要
カバー工法の場合、次回の屋根リフォーム時には葺き替えが必要になります。例えば、築20年の住宅でカバー工法を選択した場合、その30年後の築50年になる頃に葺き替えが必要になるというわけです。つまり、50年以上同じ家に住み続ける場合は、葺き替えによる屋根リフォームを行わなければならないことがデメリットになるといえます。
ただし、50年経過した物件の大半は、相続、もしくは売却・解体になることが多いはず。ご自身が住んでいる期間に屋根リフォームがたった1回で済むことを考えれば、逆にメリットと捉えることもできるでしょう。
カバー工法に向いている屋根、向いていない屋根
屋根の形状や材質、築年数によって、カバー工法に適している屋根と適していない屋根があります。最適な工法を選択することで、費用対効果を高め、後悔のないリフォームを実現しましょう。
【向いている屋根】スレート屋根
スレート屋根は比較的軽量で薄いため、カバー工法で新しい屋根材を重ねても、建物の構造への負担が少なく済みます。また、スレート屋根の表面は比較的フラットなので、新しい屋根材を被せやすく、施工がスムーズに進みやすい点も相性が良い理由です。
築年数が浅く、下地がしっかりしているのであれば、カバー工法は費用対効果の高いリフォームと言えるでしょう。
【向いている屋根】築15~30年未満の屋根
築15年前後で塗装を一度も行っていない屋根、もしくは20年~30年で一度でも塗装した屋根であれば、劣化は進んでいるがカバー工法で対応できるケースが多く、下地が健全であれば、既存の屋根材をそのまま活かせるカバー工法が費用を抑える上で有効です。
しかし、築15~30年未満であっても、必ずしもカバー工法が最適解とは限りません。施工前に必ず専門業者による入念な屋根診断を行い、下地の状態を確認しましょう。
【向いていない屋根】瓦屋根
瓦屋根は、その重量と特有の構造上の理由から、カバー工法には適していません。瓦屋根に新しい屋根材を重ねることで重量がさらに増加し、耐震性を低下させるリスクがあります。
また、瓦屋根は瓦を引っ掛けて固定する構造です。既存の屋根材をそのまま残して上から新しい屋根材を被せるカバー工法では、適切な施工が難しいといえます。
そのため、瓦屋根の場合は、カバー工法ではなく、葺き替えを選択することが一般的です。
【向いていない屋根】複雑な形状の屋根
陸屋根(傾斜のない屋根)や多角形、曲線を含む屋根など形状が複雑な場合、カバー工法は適していません。
既存の屋根材の上に新しい屋根材を被せる作業は、複雑な形状では難しく、熟練した職人の高い技術力が必要です。また、材料費が高額になったり、工期が長引いたりする可能性もあります。
屋根の形状が複雑な場合は、カバー工法ではなく葺き替えを検討する方が良いでしょう。
【向いていない屋根】築30年以上の屋根
築30年を超える屋根は、経年劣化によって屋根材や下地材の強度が低下している可能性が高く、カバー工法を採用すると、建物の構造に負担がかかりすぎる可能性があります。
ただし、築30年以上であっても、定期的にメンテナンスを実施し、屋根材の状態が良好な場合は、カバー工法を適用できる可能性があります。一概にカバー工法が不可能とは言えないため、専門業者に相談してみましょう。
屋根カバー工法の費用相場
屋根カバー工法を検討する上で、費用は重要な要素です。ここでは代表的な屋根材であるガルバリウム鋼板とアスファルトシングルの費用相場をまとめました。
ガルバリウム鋼板
軽量で耐久性、耐食性に優れているガルバリウム鋼板は、屋根カバー工法で最もよく使用される屋根材です。価格も80万円~140万円程度と比較的安価です。
ガルバリウム鋼板にもさまざまな種類があり、断熱性や遮音性を高めた製品も登場しています。また、デザイン性も向上しており、豊富なラインナップから色や形状を選べるため、見た目にこだわりたい人も満足できるでしょう。
アスファルトシングル
アスファルトシングルは、ガラス繊維や紙を基材とし、アスファルトを浸透させ、表面に石粒を吹き付けた軽量で柔軟性のある屋根材です。費用相場としては、110万円~180万円程度が目安となります。
薄くて軽いシート状のため、さまざまな屋根の形に合わせられるのが特徴です。カラーバリエーションも豊富で、和風・洋風どちらの住宅にも合うものが見つかるでしょう。
屋根カバー工法の施工の流れ
屋根カバー工法の具体的な施工の流れを把握しておくと、業者との打ち合わせもスムーズに進みます。準備から工事完了まで、どのような流れで行われるのか見ていきましょう。
1.現地調査
高所カメラやドローンなどを使用し、屋根や下地の状態を確認し、必要に応じて小屋裏の点検も行います。屋根の形状や面積、勾配などを計測し、これらの情報をもとに、最適なカバー工法の種類や材料を選定した上で、正確な見積もりを作成します。
2.足場設置
屋根は高所作業となるため、作業員の安全を確保し、安定した作業を行うために、足場を組みます。さらに養生ネットを張ることで、材料などが周辺へ飛散しないよう配慮します。
3.既存屋根の処理
カバー工法に不要な、既存の棟板金などの部材を撤去し、新しい屋根材を固定するための下地の補強や交換を行います。
4.防水シート設置
雨水の侵入を防ぐために、既存の屋根材の上に防水シートを設置します。さらに、屋根の隅や外壁材との取り合い部に専用の部材を取り付けていきます。
5.新しい屋根材の設置
新しい屋根材を設置したら、最後に棟木と棟板金等を取り付けて工事は完了です。順次足場を解体します。
6.完了検査
完了検査では、施工が正しく行われたか、施主自身と施工業者が最終確認を行います。完了検査で少しでも気になる点があれば、遠慮なく施工業者に質問し、納得いくまで説明を受けましょう。
屋根カバー工法でよくある質問
屋根のカバー工法について、疑問や不安な点は多くあると思います。よくある質問とそれに対する回答をまとめましたので、参考にしてください。
カバー工法はDIYできる?
結論から言うと、屋根のカバー工法をDIYするのはおすすめしません。屋根のカバー工法は、専門的な知識と技術を必要とするため、ご自身で施工すると不具合の生じる可能性が高くなるからです。
安全面や費用対効果からも、屋根のカバー工法は専門業者に依頼することをおすすめします。
カバー工法で雨漏りは完全に防げる?
残念ながら、カバー工法で雨漏りが100%防げるわけではありません。
カバー工法は既存の屋根材の上から新しい屋根材を被せるため、施工が適切に行われれば、高い防水効果が期待できますが、雨漏りの原因は屋根材だけとは限りません。雨漏りの原因を特定するには、屋根全体の点検だけでなく、外壁や窓サッシなど、建物の状態を総合的に確認する必要があります。
カバー工法は火災保険を使える?
前提として、火災保険の適用範囲は自然災害による損害に限られるため、経年劣化による損害は対象外です。カバー工法で修理する場合も、自然災害が原因であれば火災保険の対象となります。
ただし、カバー工法は部分的な補修ではなく、屋根全体の改修工事となるため、自然災害で部分的に損傷した場合でも、全面的に改修しなければなりません。火災保険は破損した箇所のみに適用されることが多く、カバー工法のように全面改修となると審査のハードルが高くなってしまいます。
近隣への騒音や振動はどうなの?
屋根のカバー工法では、足場を組み立てる際の金属音や、ビスを打ち込む際の音など、どうしても騒音や振動が発生します。ご近所の方々とのトラブルを避けるためにも、事前に工事の内容とスケジュールを説明し、理解を得ることが大切です。
また、業者に騒音や振動を最小限に抑えるための工夫や、作業時間帯の調整など、できる限りの対策をとってもらいましょう。
後悔しないための業者選びのポイントは?
特に重視したいポイントは「実績があるか」「構造を理解しているか」の2点です。ホームページから施工実績を確認し、カバー工法の実績が豊富な会社を選ぶと良いでしょう。
また、屋根診断士や建築士など、屋根に関する専門的な知識を持つ人がいると安心です。費用面だけで判断せず、提案力や保証制度なども確認し、納得できる会社を選ぶことが大切です。
東海地方で屋根カバー工法を依頼するならサーラハウスサポートへ
塗装は屋根のメンテナンスとして一般的な手段ですが、長期的なコストパフォーマンスや屋根の劣化状況によっては、必ずしも最適な選択とはいえません。屋根のメンテナンスを検討する際は、塗装だけに絞るのではなく、カバー工法も選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか。
カバー工法にも重量増加や通気性といったデメリットはありますが、サーラハウスサポートでは、これらのリスクを最小限に抑えるためのさまざまな対策を講じています。ドローンや高所カメラを用いた精密な屋根診断を実施し、お客様の屋根の状態を正確に把握した上で、最適な工法をご提案します。
また、結露やカビの発生を抑制するために、既存屋根と新設屋根の間に適切な通気層を設けるなど、最適な施工を徹底。実際、サーラハウスサポートが施工したカバー工法において、結露やカビの発生事例は一度もありません。
東海地方で屋根カバー工法をご検討中の方は、お気軽にサーラハウスサポートへご相談ください。お客様の大切な住まいの資産価値を守るお手伝いをさせていただきます。
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